甲斐犬物語16

甲斐犬物語 16

将来担う地元愛犬家 県外にも増えた所有者 山梨日日新聞「甲斐犬物語 16」

山梨日日新聞で1982年1月1日から1月17日まで、竹田十九平記者による甲斐犬に関する記事が連載されました。 記者の観点から取材された内容は、甲斐犬の基本的なことを理解するのに役立ちます。

(ほえる甲斐犬、山梨の山に揉みついた甲斐犬は山梨の山が最も合う)

 

県内で国の天然記念物に指定されているのはカモシカ、ライチョウ、ブッポウソウ、西湖のコウモリ、それに甲斐犬の五種類である。 甲斐犬以外はすべて大自然の中でっ暮らしている。 人間に飼われている甲斐犬は特殊な存在でもある。 しかし甲斐犬は甲府市など県内を中心に五千匹とも六千匹とも言われるほど多くなった。 昭和四十年代までは優秀な甲斐犬には文部省から認定メダルが贈られたものである。 しかし甲斐犬の数が増え、絶滅の心配がなくなったことなどを理由にメダル交付は中止となった。 一部の愛犬家の中には「最近これだけ増えたので、国の天然記念物指定が解除される」 と、まことしやかなうわさまで出ている。 しかし甲斐犬は学術的にも歴史に残る立派な国の天然記念物。 今後も天然記念物であり続ける。 文化庁の文化財調査員桜井信夫は次のように言う。 「国が甲斐犬を天然記念物に指定したのは、あくまでも在来犬種の日本犬として価値があるからだ。 絶滅してしまえば天然記念物の取り消しはあるが、逆にいくら数が増えても実在する限り天然記念物であることは変わらない」 また、どの犬が天然記念物かについては「以前は認定メダルを発行していたが、何もメダルをもらった犬だけが天然記念物ということではない。 現在も純粋種であれば天然記念物だ。 甲斐犬の場合、愛護団体の熱意でどんどん数も増えているようだが、良いことだと思う。 天然記念物に指定しているほとんどの動物の保護、保存については都道府県ごとの指導にかませている」と語っている。 県内の文化財、天然記念物を保護する立場にある県教委は各団体の開催する甲斐犬展覧会に「教育長賞」を寄贈して保護、保存を奨励している。 昭和四十年代の中旬から表面化した甲斐犬愛好家内部のトラブルには介入を避けている。 県教委文化課長は倫井俊一はこう言う。 「保護団体が乱立した事実は聞いているが、件としてはあくまでも各団体が甲斐犬の保存を目的に活動していると理解していて、教育長賞という形でバックアップしている。 文化庁の方針と同じで、民間団体の努力に期待するといった状態だが、雑種化、絶滅などというような事態が起これば直接的な指導や介入に乗り出すこともあり得る」 また、 同課の文化財担当副主幹の広報等は「県内で国の天然記念物に指定されている動物のうち、カモシカ、ライチョウ、ブッポウソウは従来の生息に変化はないが、甲斐犬の場合は当初生息地といわれた芦安村から、甲府盆地に移っている。 飼い犬として保存されてきた事情で特異な現象だ」と言っている。 岐阜農大教授田名部耕一も学者グループの集まりである在来家畜研究会の調査報告によると、 秋田犬、紀州犬 などの日本犬が原産地を離れて全国的に分布するようになっているのに対して、 甲斐犬はいまだに山梨県内に圧倒的に多い。 しかし昭和四十年代以降、県外にも甲斐犬愛好家が増えた。 事実、県外愛好家も素晴らしい甲斐犬の所有者が多い。 うかうかしていると、県外に行かなければ純粋な甲斐犬にお目にかかれない、といった事態も起こりかねない。 飼い犬、猟犬という特殊な形態で受け継がれている甲斐犬の将来は県内愛犬家の双肩にかっかっていると言っても過言ではない。 (敬称略) <竹田十九平記者> =おわり=